株式投資

世界中で株価が上がっている背景とは?【19年11月相場解説】

9月頃から大きく上がりだし、ニューヨークダウ、S&P500、ナスダックといった株価指数は、全てが史上最高値を更新しました。

アメリカだけでなく、各国が年初来最高値(その年で最高の株式の値段)を記録しています。

今回はこれらの背景にある各国の情勢と、投資家はどのように動くべきかということに関して小次郎講師が解説します。

株価上昇の要因

果たして上昇傾向は続くのか、まずは、小次郎講師の解説をもとに、現在の市場の状況を確認しましょう。

株価上昇の要因①米中貿易摩擦の雪解けが予想された

トランプ大統領が大々的に始めてしまった、アメリカ国内での中国製品に対する関税措置を発端として、2018年ごろから日中貿易摩擦がエスカレートしていました。

しかし昨年12月に行われたG20にて、両国が直接対話により歩み寄りをみせると、一気に解決ムードが醸し出されました

その影響で、今年1月〜4月までは株価が上がっていたのです。

しかし結局雪解けとはならず、アメリカの関税措置は手を緩めることなく繰り広げられました。

5月の連休明けには第3関税として、これまで2000億ドル相当の中国製品にかけていた関税を、10%から25%に引き上げる措置が決定されました。

この米国と中国の関係は、合戦と休戦を繰り返しているということで、あまり解決に期待しすぎず経過を見守ることが、大事!

株価上昇の要因②世界的な金融緩和政策

もう一つの株価上昇の要因としては、各国で行われている金融緩和政策により、市場に出回るお金が増えてあっという間に株価が上がっていく、というものです。

金融緩和の中で余ったお金は株式市場に流れる中で、やはりアメリカ経済が非常に堅調であることが伺えます。

今年に入って3度の利下げ(FRB:連邦準備制度理事会が,国内情勢に応じてる政策金利を引き下げること)を行っており、株式の産出も史上最高値を記録しました。

イギリスのEU離脱問題

イギリスがEUから離脱するという問題も、株価に大きく影響しています。

イギリスがEUから離脱した時に、世界経済の中でどのような立場に位置づけられるのかによって、株価はまた変動する可能性を秘めており、買いポジションは続けていくことが大切です。

しかし、いつ手仕舞い(決済し、現金化する)をするかということは常に見極め続けなければらなないことは相変わらずの世界ですので、損失を防ごうとする姿勢も重要となります。

この相場の上昇は、一体どこまで上がるのかという予想を立てずに、冷静な分析を続けましょう。

ベルリンの壁崩壊から30年|トランプ大統領の登場

1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊してから、今年で30年になります。

資本主義経済の勝利によって、世界の経済状況は自由な競争の中で成長してきました。

しかし一方で、貧富の差が出るという、資本主義経済においては当然ともいえる課題が浮き彫りになってきているのです。

そうした層の圧倒的な支持を得て大統領に当選したのが、トランプ氏です。

トランプ大統領は保護主義という考え方を理念として掲げています。

この保護主義というのは、外国との貿易において、自国産業の発展のために関税といった措置を行う、自由経済主義とは正反対の位置にある政策です。

保護主義が、世界の経済発展を停滞させる

保護主義を継続することで、いったんは国内産業が活性化し、国の経済が潤うように感じるかもしれません。

しかし、価値のある安価な商品が広まらないことで、経済の発展に歯止めがかかることはいうまでもありません。

11月6日、IMF(国際通貨基金)がヨーロッパの経済見通しを発表し、最悪の事態に備えて緊急対策を講じる必要があると警告しました。

そのような非常に不安定な情勢の中で株価が上昇しているのだという事実を認識し、いつでも下がる可能性があることを念頭に置くことが必要になります。

まとめ

現在の株価の上昇要因・不安要因をまとめますと、

【上昇要因】

・米中貿易摩擦の解消

・世界的金融緩和

・米経済の堅調

【不安要因】

・米中貿易摩擦の再燃

・世界の保護主義による経済不安

・イギリスのEU離脱問題の影響

といったことがポイントになります。

2019年11月の定点観察

ここでは定点観測を解説します。

株というのは、経済状況とは必ずしも一致せず、より如実な指数として存在していますので、上がり続けているときは買い続けつつ、その中で決して買い安心が永遠には続かないということも肝に銘じましょう。

IMFは、これから紹介する定点観測より、ヨーロッパに金融危機が発生する可能性があることを示唆しています。

しかし、IMFが発する危険信号と、実際のチャートには齟齬があるようで、世界経済に対する不安は、全体的には減少傾向と言えます。

定点観測①日経平均

平均線は右肩上がりで、直近の高値、そして5月の高値を超えています。

さらに超えるべき壁として、2018年10月の高値があり、これを超えるとアベノミクス以来となる新高値を記録することとなります。

非常に堅調な動きです。

定点観測②ニューヨークダウ

アメリカの動きはどうでしょうか。

2018年の10月から12月にかけては下がっていますが、現在は史上最高高値を更新しています。

こちらも非常に強い動きです。

定点観測③ヨーロッパ

特に心配されるヨーロッパ代表・ドイツの株価は年初来の高値を記録しています。

今年の4月から継続して上がり続けているような状況です。

定点観測④金

金は、世界経済が不安定な時ほど、安定して買われる商品です。

今年の5月から急激に上がりだし、過去40年来の最高値を記録しています。

しかし、天井が見えてきている状況でもありますので、株にも影響がでる要素となっています。

定点観測④金利

長期金利である国債の金利を見ていきますと、現在は金利低下の底が見えてきたという雰囲気です。

国債などで言えば、長い間お金を貸している方が、リスクも大きいため、金利は上がるのですが、この逆イールドが今年8月アメリカで起こりました。

2年物の国債の利子が、10年物の国債の利子を超えたのです。

逆イールドと呼ばれる現象ですが、歴史を振り返りますと、この逆イールドが起きた時に、株の大暴落が起こっているのです。

現在ではそちらは回復しているので、それが背景となって株がまた買われ始めている状況です。

利下げの今後について

先に述べたように、アメリカではFRBによる3度の利下げによって長期・短期の金利が変動しているのですが、今後はさらなる利下げを期待してもよいのでしょうか?

FRBの金融政策を掘り下げながら、矢口先生の解説とともに確認していきましょう。

FRBの金融政策

FRBの金融政策における目的は、大きく分けて二つあります。

①インフレ率の安定

FRBは2012年に、2%の物価目標を発表しました。

これが金融政策の主軸となっていますが、実際にはその目標をほぼ下回る推移を続けているのが現状です。

②雇用の最大化

雇用の最大化、つまり完全雇用もFRBの目的のひとつです。

現在雇用統計を見ると安定した状態が続いていますが、これが進むと、人出不足などの問題からンフレが過剰に起こる可能性があります。

これを防ぐために、この2大柱の目標を立てて、FRBは金融政策を行っているというわけです。

日本での雇用状況は、チャートをみるとかなり安定しています。

2010年頃の就職氷河期と比べると、求人数が失業者数を上回っている状態ですので、雇用状況がかなり改善されたということが分かります。

一方、アメリカでは、一時失業保険の受給者数が600万台だったのが、11月現在で168万台に下がっており、雇用の状況が改善していることがわかります。

背景には、やはりFRBの金融政策により、金利が上がり、賃金も上がっているといった点が挙げられます。

レポ取引による資金供給

このような安定した雇用が確率されつつあり、FRBの一方の目標は達成が継続されいる経済状況の中で、アメリカ経済におけるレポ取引が話題となっています。

レポ取引とは、証券(主に国債)を買う代わりに現金を貸すことで、大量の証券があるのに現金が足りない、という企業の資金集めに最適な方法です。

アメリカではこの一時しのぎとも言える異例の対策を、来年1月まで延長することを決めました。

しかしこのレポ取引では、企業側はまた国債を売ってお金を戻す、ということを翌日には行わなければなりません。

こういった対策では、根本的な金利是正の解決策には至らないのではないか、という声が、当然アメリカ国内でも起きているようです。

そこで、FRBはこの国債購入後の資金貸し出しを、そのまま半年ほど貸し出したままにする措置を決定したり、ガバレッジ比率(30日間連続する金融危機のストレス下でも、流動資金を常に調達できることを目的とした基準)の規制緩和を行うことにしたのです。

FRBとしてはこの措置は、ャドーバンキングを相手とした資金の供給目的がある、という背景を,投資家の方々は頭の中に留めておくことが大切です。

シャドーバンキングからの貸出が許容された

この規制緩和によって、シャドーバンキング、いわゆる銀行以外の金融仲介業務ですが、こちらもかなり利用しやすくなりました。

シャドーバンキングは、アメリカでは特に住宅ローンにおいて利用されることが多く、今のところは住宅市場も安定し、一種バブルのような様子もみせています。

アメリカの不動産価格は右肩上がり

こうした状況から、アメリカの不動産価格は上昇の一途と辿っており、家を購入するのは大変な状況となっています。

一方で、すでに土地を所有している方にとっては、その資産価値がどんどん上がっているので、好都合となります。

中古住宅は、需要と供給のバランスが良くなく、土地の値段が上がっていることで、それを手放して転居する人が少なくなってきているようです

こうした状況を知ることは非常に重要で、投資家は正しいデータとともに、株の動きを適切に把握する必要があります。

アメリカの貿易の動向

別の経済指標のポイントとして、アメリカの貿易を解説します。

アメリカの貿易赤字の相手国としては、冒頭に述べた関税の問題も浮上している中国です。

そのほかにもEU、メキシコ、そして比較的緩やかではありますが日本も含まれます。

アメリカにおける輸入品は工業製品が一番減っており、製造業が活性化していない状況が伺えます。

保護主義の影響

中国は貿易黒字が拡大しています。

これは、決して輸出が増えているということではなく、それを上回って輸入が減っているということなんです。

中国国内でも、消費が低下しており、ここでも保護主義による経済の停滞がみえます。

中国企業は、これまで企業破綻という概念がなく、事実上は破綻していても、国としては最低限支えるということは行っていました。

しかしこのままでは国が弱体化するということで、中国では破綻した企業をしっかりと閉鎖させる、という手法に切り替えました。

簡単にいうと、企業の仕分けをし、経済の成長をより本当の意味で促進しようという流れになっています。

日本株の動向

2005年からの日本株を分析すると、個人投資家たちがかなりの量の株を売っていることが分かります。

保険も同様にして売られており、それらを誰が買っているのかと言えば、外国人や日銀が買い、下支えをしている状況です。

日本株は米株と同様にどんどん値上がりしていて、誰も買わなくなってきているのでますます値上がりする、という悪循環に陥っていくことが予想されます。

日本人の個人金融資産は、6月末時点で1860兆円あります。

現金を持っている日本人ですが、株式と株式投資を合わせたものの保有率が、海外やアメリカの朋友率には劣っています。

先に述べたようにどんどん売ってしまっていますので、株価が上がった時に資産が増える恩恵を受けられていないの現状です。

これは、個人が株をもう少し買う必要がある、という話ではなく、確かに長期投資のリスクは大きいので、それも踏まえつつ、日本株の潜在的な力をもう少し信じて、投資の勉強を今後も継続しつつ、株価の変動をあまり怖がらずに挑んでいくことが大切です。

 

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