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FXや株式投資のみに限らず、トレーダーならば普段からよく目にしているテクニカル指標の一つが移動平均線です。この移動平均線とは、価格のトレンドを明確に見せてくれる優れものです。
しかし、この基本中の基本である「移動平均線」ですが、有名なテクニカル指標でありながら、正しく使えているか、正しく意味を知っているかというと一番疎かにされがちでもあります。
移動平均線を正しく使いこなせていれば、どんなトレーダーであっても、日々のトレードをもっと有利に出来るようになります。この記事では移動平均線の正しい使い方を徹底解説していきます。
移動平均線の正しい使い方
移動平均線は、チャート分析の王様と言われているくらいに誰もが知っている有名なテクニカル指標です。しかし、その有名度とは裏腹に、移動平均線を使うことの正しい目的を知らないトレーダーも少なくありません。まずはチャート分析において、移動平均線をどのような目的でどのように使うのかを明らかにしておきましょう。
動平均線の目的はトレンドを発見しやすくするもの
移動平均線を使う目的とはズバリ、価格の動きを滑らかにして、トレンドを発見しやすくするというものです。
実際のところ、チャートを見ても、ローソク足だけでは価格の上下が激しく、今現在がどのようなトレンドなのか、判断しづらいときがあります。下記は、価格の値動きだけを表示したチャートです。
しかし、ここに価格の動きを移動平均線に変換してチャートに加わえることによって、下記のように、この期間はどのようなトレンドだったのかがなめらかな線になることによって一目瞭然となります。
このチャートでは赤色、緑色、青色の線がありますが、それぞれ下記のような違いがあります。
黄色・・・直近20日間の価格の値動きを平均化して結んだグラフ
ピンク色・・・直近40日間の価格の値動きを平均化して結んだグラフ
日数設定のポイント
移動平均線の日数を設定するときには、どういう期間のトレンドを知りたいかによって設定する日数が変わってきます。トレンドの中でも、長期トレンドで見た場合は上昇、中期トレンドで見ると下降、短期トレンドで見るともみあいなどという場合もあります。
長期のトレンドが知りたければ期間の長い移動平均線を使い、逆に短期のトレンドが知りたければ期間の短い移動平均線を使うことが、日数を設定する上でのポイントとなります。
【日足】5日、25日、50日、75日、100日、150日、200日
【週足】9週、13週、26週
【月足】12か月、24か月、36か月
移動平均線を使いこなすには計算式を理解する
テクニカル指標を使うためには、計算式をしっかりと理解する必要があります。計算式をしっかり理解することでテクニカル指標を正しく使うことが出来るうえに、テクニカル指標には付き物のダマシに対する対策もとれるようになるのです。
また、移動平均線の計算式はテクニカル指標の中でも特に簡単で意味が理解しやすいため、初心者の個人トレーダーにとっても、とても使いやすいものとなっています。
■5日移動平均線の場合
(本日の終値+昨日の終値+2日前の終値+3日前の終値+4日前の終値)÷5これは過去5日間(正しくは当日含め過去4日間)の移動平均線の計算式です。
本日からさかのぼって5日分の終値を合計し、5で割ることで平均値を求めます。25日、100日の移動平均線も考え方は同じです。
必要な日数の終値を合計して、その日数で割るだけ、と非常にシンプルです。もちろんこの計算式の考え方は、週足でも時間足でも同じです。
このようにして、上記の計算式によって導き出した「ある期間の平均値」をつないだ線が移動平均線となります。そして、仮に5日移動平均線ならば、過去5日間に買っている人の平均買値と売っている人の平均売値が移動平均線を見ることによって簡単に分かります。
つまり、移動平均線とはある期間の平均買値(または平均売値)がどう変化しているのかを表したチャートなのです。この平均買値(または平均売値)が時間の経過と共にどう変化していくかを把握することが、移動平均線分析のキーポイントとなります。
移動平均線は平均値をずらして記録する
前項で、移動平均線はある期間の平均値をつないだ線だということをお伝えしました。しかし、チャート分析の移動平均線では、この平均線を通常の記録すべきところからずらして描いています。実は、ここに移動平均線に「移動」という言葉が使われている理由があるのです。
平均値を当日の記録とする
移動平均線を表示させるために記録していく平均値ですが、普通に考えると仮に「5日間の平均値」ならば、本来であれば計算期間の中央、つまり2日前のところに記録するのが正しい記録となります。しかし、移動平均線のチャート分析ではこの平均値を当日の記録として扱います。わざわざ平均線をずらして記入するのです。
■過去5日間の記録の場合
本来だったら、
本日の終値+昨日の終値+2日前の終値+3日前の終値+4日前の終値
↓
この5日間で出した平均値は本来であれば、
計算期間の中央である2日前のとこに記入するのが正しい。■移動平均線の場合
本日の終値+昨日の終値+2日前の終値+3日前の終値+4日前の終値
↓
5日間で出した平均値を計算期間の中央ではなく、
当日のところ(本日の終値)にずらして記入する。
現在の価格と比べる
何故、わざわざ平均値をずらして記録をするのかというと、「本日の価格」と「ある期間の平均値」を比較したいためです。そもそも、移動平均線とは現在の価格とある期間の平均値を見比べるための線なのです。そのために、ある期間の平均値を「移動」させて現在の価格と照らし合わせているのです。
このように、移動させて比較することによって、現在の損益状態やその変化などが浮き彫りになります。ここで、ある日の価格と移動平均線の位置関係について注目してみましょう。25日移動平均線の場合で解説をします。
まず、ある日の価格が過去25日で設定した移動平均線よりも上にあるということは、その25日間に買っている人は利益を出しているということを意味しています。逆に、その期間に売っている人は損をしているということになります。もし、価格が移動平均線より下にあれば、上記とは逆になり、その期間に買っている人は損をしていて、売っている人は利益を出していることを意味します。
ここを理解していれば、時間の経過と共に利益や損失が増えているのか減っているのかも一目で分かるようになります。つまり、平均買値(または平均売値)を把握し、それを現在の価格と比べて、その時点での損益がどうなっているかを分析することで、今後どのような注文が市場に出やすいのかを推理することが出来るのです。
例えば、買いスタンスが利益を上げることが出来るのであれば、さらに買いを検討したり、また利益がある程度上がれば、利益確定のための売りを考えるでしょう。しかし、チャートが、売りスタンスの方が利益を上げることが出来る方向に動けば、損切りのための売りを検討することになります。
このように、移動平均線による分析では、現在の損益状態とその変化を浮き彫りにし、次の行動のための判断材料として、非常に重要なデータを手に入れることが出来るのです。
移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロス
移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスは、あらゆるテクニカル指標の売買シグナルの中で、最も有名です。
ゴールデンクロスとは、買いサインを表しています。
デットクロスとは、売りサインを表しています。
そして、ゴールデンクロスとは、価格が上向きに移動平均線とクロスする局面を示し、デットクロスとは、価格が下向きに移動平均線とクロスする局面を示しています。下記のイメージとなります。
この、ゴールデンクロスが買いシグナル、デッドクロスが売りシグナルだと知っている人は多いのですが、その理由までもしっかりと答えられるひとは多くありません。しかし、テクニカル指標の売買シグナルを知る上で、「なぜそこで売買すれば良いのか」という本質を知ることはとても重要です。
ここをしっかりと理解していることによって、この売買サインが通用しない場面があるときや、その通用しない場面はいつなのかも分かるようになるのです。
ゴールデンクロスは買いのサイン
移動平均線でのゴールデンクロスは、価格が移動平均線を下から上へクロスしている状態です。(※4項画像参照)それまで自分のポジション(保持している通貨)にマイナスが出ていた買い方が、プラスに転じる分岐点を指します。つまり、ゴールデンクロスは買いシグナルとなります。
ゴールデンクロスが発生する以前は、計算上の損(チャート上で移動平均線が表す損)を抱えて、損切りのための売りを検討していた買い方が、ゴールデンクロスが発生すると損が利益に転じたことから、逆に更なる買いを考え始めるでしょう。
しかし、このゴールデンクロスを別の角度から見てみると、それまで計算上は利益になっていた売り方のポジションが損失の方向へ転じる分岐点ということでもあります。そうなると、それまで強気だった売り方は、損失を膨らませないために損切りの手仕舞いを検討し始めます。売り方の手仕舞いは、市場には買い注文となって出されるため、さらに相場を押し上げる効果があります。
このようにゴールデンクロスの発生以前は圧倒的に売り方が有利だった相場が、ゴールデンクロスの発生とともに一気に買い方が有利に変化していきます。この相場のバランスの変化にエッジ(※1)が発生し、買いのチャンスとなるわけです。
エッジとは強み、有利さ、優勢ということです。
相場には絶対、完璧、完全ということがないため、わずかな強み、有利さ、優勢さ、つまりエッジを自分のトレードに取り入れることがトレードでの成功につながります。
デッドクロスは売りのサイン
デッドクロスの考え方もゴールデンクロスと同じです。ただ、プラスとマイナスの捉え方が真逆となることに注意しましょう。
ゴールデンクロスとは逆で、デッドクロスは売りシグナルとなります。価格が移動平均線を上から下へクロスしている状態(※4項画像参照)で、それまで自分のポジション(保持している通貨)に利益が出ていた買い方が、損に転じる分岐点を指します。
ここで、買い方と売り方のそれぞれが、買い手は手仕舞いのための売りを、売り手は更なる売りをする可能性を高め、相場には下降圧力が働きます。そのエッジを狙うことが、売りのチャンスとなるのです。
このようにゴールデンクロスとデッドクロスが、買い方と売り方の損益の分岐点であることが理解できれば、相場のエッジを見極め、優位なトレードが出来るようになるのです。
ただ、このゴールデンクロス・デッドクロスはもみあい相場の時では有効でないことを覚えておきましょう。なぜならば、もみあい時は価格と移動平均線は何度もクロスを繰り返すため、ゴールデンクロスだと思ったらもうデッドクロスになってしまうという場合があるからです。
日移動平均線はクロスを判断しやすくなるカギ
最近は、ローソク足に最初から2本の移動平均線が重ねて表示されているチャートを見かけることが多いです。その2本の移動平均線は、日足チャートならたいてい5日移動平均線と20日平均線が描かれています。
こういったチャートにおいて、20日平均線が過去1か月(1か月は約20日営業日)の売買の損益状況を見るために描かれたものだということは間違いありません。もう一方のの5日移動平均線を表示させるのは、一週間の取引の平均値を見る目的もありますが、実はもうひとつ目的があります。
それは、もともと移動平均線を使うための目的である、価格の変動をなめらかにするため、つまり「ローソク足」の代わりとして使用しているのです。どういうことかというと、本来チャートを使ってトレーダーが見たいのは価格と移動平均線がクロスする分岐点です。しかし、ローソク足にはヒゲもあり、大きさも大小があるため、単純に見ただけではクロスを認識することが難しいです。そこで、この問題を解決してくれるのが、5日移動平均線です。
5日移動平均線は、上昇トレンドの時にはローソク足の実体下部を結ぶ線となっており、逆に下降トレンドの時にはローソク足実体の上部を結ぶ線となります。そのため、価格の変化をなめらかにより細かく表してくれるのです。下記のイメージとなります。
これにより、ピンポイントに的確なクロスを認識することが出来ます。
例えば、20日平均線が5日移動平均線とゴールデンクロスすれば、ローソク足の実体部分とは完全にクロスが終わっていることになります。逆に、20日平均線が5日平均線とデッドクロスすれば、ローソク足の実体部分とは完全にクロスが終わっていることになります。下記のイメージとなります。
黄色の線・・・20日平均線青色の矢印・・・ゴールデンクロス
赤色の矢印・・・デッドグロス
このように価格と移動平均線のクロスをはっきりと認識するためには、5日移動平均線がカギとなるのです。
もみあい時は移動平均線かい離率が役に立つ
前項でゴールデンクロス・デッドクロスは、もみあい相場の時には通用しないとお伝えしました。しかし、もみあい時に有効な売買シグナルも存在します。それはずばり、移動平均線かい離率です。
かい離率は計算式を使って数値を表す
価格は波打ちながら上下します。また、価格は移動平均線に支えられながら上昇したり、下降します。そのため、価格は移動平均線から大きく離れると、再び移動平均線に近づくという性質を持っています。
しかし、見た目だけで今は価格と移動平均線が離れている、または近づいているというのでは、しっかりとした根拠がありません。そこで、移動平均線かい離率は、価格と移動平均線がどのくらい離れているか、計算式を使って数値で表します。計算式は下記になります。
(例)
1、価格と移動平均値の差を求める
価格―移動平均値=A2、1で出した差が移動平均線の何%に当たるかを計算する
A÷移動平均値×100=かい離率
この計算式を使って出した数値を見て、かい離率の数値がプラス方向で一定程度大きい場合は、価格が移動平均線から大きく離れて上昇していることになるので、今現在は「買われすぎ」と判断し、買いポジションを持っているなら手仕舞う、持っていないなら売りを仕掛ける判断材料にします。
これが逆に、かい離率がマイナス方向で一定程度大きい場合には、今現在は「売られすぎ」と判断し、売りポジションを手仕舞う、または買いを仕掛けるタイミングだと判断します。
移動平均線かい離率が活用可能な場面
ただし、この移動平均線かい離率で売買シグナルを見つけだすのは、もみあい時に逆張りとして活用するときのみ有効です。
一般的にみんながやっている上昇トレンドの時に買い、下降トレンドで売る、この行為を「順張り」と言います。しかし、そういった状況とは逆に上昇トレンドで売り、下降トレンドで買う、この行為を「逆張り」といい、この行為はもみあい時に有効に機能する売買判断で、上昇トレンドや下降トレンドが明確な場合は有効ではありません。
このため、移動平均線かい離率を逆張りで使うなら、大きく上へ離れていた価格が移動平均線に近づきだしたので売る、下へ大きく離れていた価格が移動平均線に近づいてきたから買うというスタンスで、トレンドがはっきりと上昇もしてなければ下降もしていない、横ばいになった状態、つまり、もみあい時に使うことが有効となります。
まとめ
テクニカル分析の基礎中の基礎、というイメージの移動平均線ですが、逆に移動平均線を制する者がチャートを制すると言われるほど重要なテクニカル指標です。
移動平均線を使いこなすことが出来れば、チャートの見方は大きく変わり、利益を出せるようになります。まずはこの移動平均線の基本中の基本を極めて、勝てる投資家を目指しましょう。
また、最後にお伝えした”乖離率”について「難しかった」「もっと詳しく学びたい」という方向けに新たに記事を作成しましたのでこちらからご覧ください。
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どれも10分ほどで学べる内容になりますので、通勤時間や寝る前のちょっとした時間にご覧ください。